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2009.04.06 Monday | - | - | -
ジャムパン的2007年の記録
■2007年は、数年前から聴き続けていた日本語ラップやヒップホップ、去年辺りから聴き始めたオリタナティヴ・ロックっぽいものに加え、意識的に今まで聴いた事の無いものに新旧問わず触れてみようと頑張ってみた。そりゃもうわざとらしい位に。そんな訳で、一つの文脈で1年における何かを結論する事は出来ないのだけれど、1年分の発見を出来る限り詰め込んで記録しておこうかと思います。

■キリンジは今月25日に配信される"家路"をもって、デビュー10周年のプレ・アニヴァーサリー企画《キリンデー》シリーズ(7ヶ月連続、配信限定で曲をリリースするという21世紀的な試み)を締め括る。昨年の秋から着々とキリンジのアルバムをTSUTAYAで漁り続けていた私の最大の音楽的関心事は、今日まで常にキリンジであり続けた。今やキリンジコミュのネタトピック《こんな新曲は嫌だ!》トピの常連になる三歩手前である。探すのはやめて欲しい(っていうか普通に見つかる)。

■前述《キリンデー》でリリースされ続けた楽曲達は、エレクトロだのAORだの、彼らの興味の赴くままに選び抜かれた要素を乱暴に記号化して組み合わせて行く、危険な実験精神から繰り出されるライト級ジャブの連続だった。音の構成自体はシンプルでありながら、活動初期に少なからず拠り所としてきたAORという要素を、"タンデム・ラナウェイ"のわざとらしさでいとも簡単におちょくってしまう辺りにデビル堀込を見た思いがして、ワクワクした。これは冨田恵一のもとを離れてから、"Home Ground"(兄ソロ)〜"Dodecagon"と、駒を進める毎に次第に顕著化して来た傾向だと思う。《音楽性の記号化》は、打ち込みというツールに着目して彼らが得た、大きなヒントの一つだったのではないかと思う。

■ポップスついでに、2月にリリースされていた安藤裕子の"shabon songs"も素敵なアルバムだった。歴代の女性シンガーソングライターの亡霊が随所で憑依する前作に比べれば圧倒的に自然な形で新しいカラーを打ち出せている作品だったし、そうだという事が、1曲目"手を休めてガラス玉"が始まった瞬間に読み取れる。"雨唄"のラップっぽいところとか"Sucre Hecacha"には何とも云えない萌えを感じるし、それでも"The Still Steed Down"と"唄い前夜"の歌詞から時間感覚のオトナさ(だってもう30ですから)が垣間見えると、なるほど萌えている場合ではないとも思わされ、そのバランス感覚に、歪Rはほとんど擬似恋愛をしていたと言っても過言ではないだろう。

■個人的に、密かに2007年の最優秀作品ではないかと思っているのが、以前コラムでも紹介したMakkenzの"白くなる時刻"である。日本のラッパー達は、最近特に楽天的に言葉を選ぶようになった印象がある(背景として彼らが楽天的ではいられないような状況におかれているのかも知れないが)。そう考えると、言葉の本質に触れようとするような作品、もしくは触れ得るようなパワーを持つ作品も最近は少ない。「言葉にはならないものを表現」するというコンセプトを設け、その過程で言葉を使いまくるという矛盾した形を曝け出すMakkenzのこの作品の構造は、かなり斬新なアプローチだし、その他コラムでも触れたような異化による破壊、関連づけの暴力性も含め、大変面白いアルバムだった。

■Macka-Chinのアルバム、及び追ってリリースされた映像作品は、恐らくそう主張するのは信者だけだと思うが、素晴らしかった。春休みのベトナム旅行の計画がモチベーションの低下で頓挫し、やりきれぬ気持ちのまま東京(つーかむしろ神奈川)で学生生活を送っていたので、ところ構わず三味線を掻き鳴らし、カメラを構え、その様が傍から見れば明らかに浮ついた観光客にしか見えないものだとしても、物怖じせずにひたすら旅を続け、一つの映像作品を作り上げたこの男の俗っぽい生き様、そしてラストに浮かび上がる"ENJOY YOUR LIFE"のテロップに、私は大いに感動し、元気を貰った。

■Tha Blue Herbのアルバムは、"Phase 3"で煽ったアグレッシブさへの期待をさっぱりとスルーした仄暗さに包まれていた。興味深かったのはその音質で、あんなに尖ったイメージだったO.N.O.のトラックのドラムの響きが非常に耳当たりよく、適度な重みでストンと鼓膜に落ちてくる。この独特の心地良さを、恐らく昨年のMJPのアルバムも目指していたのだろう。結果、音質面においてMJPはラップが聴こえづらいだけとなり失敗、兄貴分にあたる彼らTBHが綺麗にそれをやってのける形となった。これを経験の賜物とするならば、"Life Story"なんて仰々しいタイトルのアルバムを出している事もさほど鼻につかない。

■私事で恐縮だけれど、夏には半年強作り続けていたアルバムが完成し、人知れず達成感を噛み締めていた。これを作っている途中、たまたま手に取って聴いていたPAM(ミズモトアキラ)の"Journalized"というアルバム(リリースは去年)は、そのパーソナル感、というか、己の孤独をとことん美化して昇華させたような作風に何故かひどく感動させられ、くじけそうな時の励みになった。パーソナルな音楽を作る上でモチベーションの維持はひどく難しい、という事が身に染みて判った一年だった。

■ミクシィの日記を通してEccy氏のトラックを1年ほど前から頻繁に耳にしていたので、"Ultimate High"はあまりの話題沸騰ぶりに正直吃驚だった。何やらカップリング曲のピアノ・ループが災いしてか、Nujabesの影響を批難する声が一部で上がっているらしいが、ズージャーで美メロであるという点だけを論っての指摘なら的外れと云うべきだろう。あるぱちかぶと・シマダカズユキの2名のラップと素晴らしいバランスを織り成すこのトラックのジャジーさは、ある種の神秘性を求めるNujabes的なジャジーさよりも、圧倒的に「日本のサブカル」的である。

■Radioheadの"In Rainbows"は、CDではなく彼らのホームページでリリースされた。価格は「up to you」。目玉が飛び出るような額を入力して支払う事も、無料でアルバム一枚分をまるごと入手する事も可能、という前代未聞の形式が話題を呼んでいた。幾ら支払うべきかと深く(具体的に云うと7秒くらい)悩んだものだが、結局自分は今までリスナー倫理を遵守しているようなツラをしながら、ただただアーティストやレコード会社が要求する額に物欲で服従していたに過ぎないという事が判った。それに今年は特に色々あって、「シーン」に賽銭を投げ込む事に生きがいを見出している人間には見飽きていたので、ここはひとつ無料ダウンロードに踏み切る事にしようと決めた。そう、今作で発生する彼らの利潤のうち殆どは幾千万もの後ろめたさで出来ているのだ。

■しかし、Radioheadがこのリリース形式で成功を収めた途端、第一線にいるようなバンド達(Nine Inch Nailsとか)が大々的に後乗りして行く屈託の無さには頭が下がる。勿論Radioheadが提示した新しい音楽の取引の形を肯定する姿勢の表明なのだろうけれど、アレくらい素直に後乗り出来なきゃカッティング・エッジには立てないという訳か。

■その他、2007年リリースの印象的だった作品は以下の通り(アーティスト名順)。

アルバム
・4ce Finger + DJ Quietstorm "Japanese Alien Human Being"
・Aquarius "One Drop"
・Coltemonikha "Coltemonikha 2"
・Feist "The Reminder"
・Killer Bong "Last MPC"
・Moka Only & Numata "Moka Only vs. Numata"
・Seeda "街風"
・THC Crew "Tokyo Hoya Callin'"
・Tommy Guerrero "Return Of The Bastard"
・Twigy "Akasatana"
・東京事変 "娯楽"


・DJ Baku "B-Boy Awakening feat. Freez"
・Garble Poor! "The Other Side"
・Goodings Rina "大都市を電車はゆく"
・Nitro Microphone Underground "Special Force"
・Omar Rodriguez-Lopez "Please Heat This Eventually"
・Tha Blue Herb "Phase 3"
・Tha Blue Herb "この夜だけは"
・椎名林檎×斉藤ネコ "ハツコイ娼女"
・鈴木亜美 "それもきっとしあわせ"

■メリークリスマス。良いお年を!



文:歪R
(http://blog119.fc2.com/wanir/)
2007.12.18 Tuesday | ジャムパン買って来い。今すぐ。 | comments(0) | -
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