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2009.04.06 Monday | - | - | -
フリースタイルバトル進化論
KREVAがB-BOY PARK MC BATTLEを3連覇した頃の映像をYOU TUBEで改めて見直していると酷く驚いた。思わず口をポカーンと開けてしまい、「これが決勝のバトルなの…?」という台詞が大きなフォントで頭の右上あたりに表示されていただろう。(想像上)当時からスタイルを確立していたKREVAに対して、その対戦相手の未完成な佇まい。そこにはただの服装であったり見た目を"まんま"ディスるというbay4kの名言も形無しの惨状であった。まだその内容は良いとしよう。(百歩譲って胡坐を掻きながら)敢えて名前は伏せるが、その時見た映像でのKREVAの対戦相手は困惑した表情で狼狽していた。間は空くわ、ライムは貧弱だわ、やっちゃった感丸出しなのである。彼を批難したい訳ではない。ただ単に2000年以前のフリースタイルバトルのレベルが現在2007年と比べるとあまりにも大差があるのだ。ボク達は耳が肥えてしまった。同時にバトルのレベルが大きく上がった。それは2002年 B-BOY PARK MC BATTLEの決勝戦、般若VS漢から紐解かれた新たなフリースタイルバトルの歴史の始まりによって確かに変わり始めたのだった。

KREVAの小節末で確実に丁寧にハッキリと踏むスタイルが過去の定番とすれば、漢から始まった高速なテンポの中で喋くりに近い言葉を込めながら要所、要所で踏んだりする昨今の流れ。聡明なCOMPASS読者でお気づきだろうが、そうした主流の変化と共にフリースタイルバトルの底上げの役割を果たしたのがダメレコを発端としてムーブメントを作ったサイファーである。どんな場所であれ、渋谷のハチ公前であれ、両親が真夜中に禁断の営みを続けている傍であれ、ラップという歌唱方法を覚えた人が数人集まればサイファーは始まる。一定のテンポでライミングを繰り返しながら、フリースタイル経験値を得る事が出来る。はぐれメタルを狙うようなジャンプアップではなく、スライムを倒して地味に経験値を稼ぐような、そんな修行方法。(皆が皆、その経験値をフリースタイルへ振り分けてはいないだろうが)

そこに満を持して登場したのが、奇しくも漢のLIBRA RECORDが主導となって全国で予選を行い真のフリースタイル王者を決めようという『ULTIMATE MC BATTLE 2005』(以下UMB)だ。無名であろうが矢沢永吉よろしく成り上がり可能なサバイバルトーナメント。全国のヘッズは歓喜し、自らを売り込む手段として躍起に参戦した。しかし、第一回の主な決勝進出者はすでに地方で知名度のある実力者と言っていいラッパーが勝ち上がった。(一部を除き)この時点では、すでにラッパーとしての総合的なスキルを積み上げていた熟練者と、若手のラッパーとの差が目に見えてあったのだ。その中で優勝したのはカルデラビスタ。しかも、前述の高速テンポにおけるバトルの先駆者である漢を、ある意味でKREVAの様なオールドスタイルに近い確実に小節末でタイトなライミングを発揮したカルデラビスタが打ち破ったのだ。明瞭でいて分かりやすいライミング、捻りの効いた返しなどが支持を得たのだろう。納得の優勝と言っていい。

その熱気は日本語ラップシーンに加速的に広がり、UMBの存在価値はバブル的に跳ね上がった。それまでライブ活動を経て音源をリリースし、そこで全国へアピールする基本的なプロセスを飛び越え、バトルで活躍→全国へアピールという図式が出来上がったのだ。世は正に戦国時代。マイクを武器に相手を薙ぎ倒す、そんな闘いが全国各地で小規模なフリースタイルバトルの大会で行われ、B-BOY PARKのMC BATTLEの先駆者的なプロップスは、UMBへと移り代わり、ダメレコ主催の『3on3』というチーム制の面白い大会まで生まれた。その流れを持ってフリースタイルのレベルは驚く程の進化を遂げ、底上げされる事となった。そして満を持して成熟した頃合に開催された昨年のUMB2006は、王者カルデラビスタ、韻踏合組合からHIDADDY、ICE BAHNからFORKといった名高いフリースタイル巧者が順当に決勝進出を果たす。しかし、一方で大半が全国的な音源アピールを経ていない若いラッパーが占める状態にボク自身不安を感じていた。

正直に言おう。一回戦で早々に行われたHIDADDY VS FORKという事実上決勝戦と言える名勝負はともかく、全体的な印象は物足りなさに尽きる。確かに皆上手い。初めて名前を見るラッパーも、決勝進出するだけあって一定のバトルクオリティを提供。大舞台でも思う存分に実力を発揮しており、その姿は勇敢そのものであった。しかし、後に残る余韻は「若くても上手い人が増えたな」という感情。勿論、フリースタイルが上手いのは最重要視される要素だが、バトルの成熟化によって同時に現在のバトルで"勝つ為に特化したスタイル"が浮き彫りになって、皆がそれに倣ったかの様な印象を受けてしまったのだ。観客の心象を鷲掴みにし、勝利へと導くプロセス。その到着点を同じベクトルにおいて同時に意識し、そこへ向かい続けた結果がUMB2006へと集約された様に思う。残念ながら、判定を下す観客達も同じ視点を見定め、その流れを助長したのではないだろうか。

この印象はボク自身の個人的なものだ。ヒップホップの定義、ヒップホップはこうあるべきだ!日本語ラップはこうすべきだ!なんて議論、討論がぶつかり合う事が日常茶飯事な自己主張の強い文化において、ひとつの答えが正しいとは思わない。だが、ボクはフリースタイルにしろヒップホップが原点となり生まれた道具であるなら、ラッパー自身の個性全てをぶつけ評価されるべきだと思う。ライミングだけではない。ビートに合わせた適応力の高いフロウは当然。(Coe-La-Canthの吉田のブービーの魅力はこの点に尽きる)それまでのラッパーとしてのバックボーンを血肉とした説得力さえも武器になる。今回、LUNCH TIME SPEAXのGOCCIがお世辞にも上手いとは言えないライミングを持ってしても、威圧感、存在感といったライミング以外の要素で勝ち上がった様に、生き様や滲み出る魅力すらもラップへ込めて吐き出す。そんなラッパー自身の魅力を評価すべきなんじゃないだろうか。

それならキャリアのあるヴェテラン勢を優先的に勝たせるのかよ!という極論も出てくると思うが、そこは勿論フリースタイルバトルという要素も備えた総合的なラッパーを支持したいというボクなりの意見である。何故ならそっちの方が面白いから。1VS1という性質上、格闘技に似た思いを馳せる人が多いと思う。PRIDEだって様々な経験をそのまま背負った者同士が真剣勝負をするからこそ、その背景に興奮して応援する。桜庭VSグレイシー一族といったドラマの様に何事にも勝負にはドラマが必要なのである。そのドラマを演出するのは個性だ。天下一武道会のような夢の組み合わせ。それこそ思い入れのあるラッパーがUMBの決勝に上がって一体どんな試合を見せてくれるのだろう?という期待感。今、KREVAがUMBに参戦したら?400戦無敗ヒクソン・グレイシーの様な神格化された伝説を背景としてKREVAが参戦すれば勝っても負けてもそれは物凄い話題になると思う。それが叶わぬ夢だとしても、熱狂的なファンは暖かみのある夢を持ち続ける。

そんな夢を同時に抱かせる魅力があるのがUMBだろう。他に追随を許さないフリースタイルバトルとしての一大重要イベント。まだ3年目と歴史の浅い大会ではあるが、今後何年も続けていけば無名の決勝進出者がポップシーンでブレイクする様な作品をリリースしているかもしれない。ハードコアなスタイルで日本語ラップシーンの救世主となるべく存在が生まれるかもしれない。毎年惜しい所まで進むも負けてしまうも名試合ばかりを残すK-1ジェロム・レ・バンナの様な面白い存在が現れるかもしれない。(HIDADDYにはそうならないで欲しいが)この「〜かもしれない」という言葉は夢の大きさと比例して、ファンが発する言霊そのものである。その言霊が増えれば増える程に、分厚い信頼となって名誉ある価値の高いイベントとなる。ボクはそんな期待を展望として交えながら今年のUMBに期待している。演出、審査方法など改善の余地はまだまだ残されていると思うが、主催であるライブラはその問題点を先日リリースされた『ULTIMATE MC BATTLE 2006 JAPAN TOURS ARCHIVE』内でもピックアップしている。何を基準に判定するのか。観客の声、審査員のセンス、または専門家の導入など、試行錯誤を繰り返す内にスタンダートと言える形が見えてくるはずだ。その過程も含め、フリースタイルバトルは共に進化して行くのだろう。期待と不安が入り混じる感情が、このような文章を書かせたのかもしれない。



文:ヨウヘイ
2007.10.08 Monday | ハレンチ☆日本語ラップ学園 | comments(1) | -
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コメント
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| - | 2008/04/06 6:40 PM |
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